iDeCoはよく耳にするけどDCってなに?というかたもいるかもしれません。
今回はそんなDCについて解説していきます。
DCとは「Defined Contribution Plan」の略で企業型確定拠出年金です。
ちなみにiDeCoは「individual-type Defined Contribution pension plan」の略で個人型確定拠出年金です。
DCのメリット
メリットは3つあります。
① 掛け金が非課税になる。
② 運用益が非課税になる。
③ 受け取る際に控除を受けられる。
① 掛け金が非課税になる。
掛け金は基本的に企業が負担するため、従業員からしたらかけている掛け金に対しては税金がかかりません。
また企業からしたら、負担した掛け金は損金算入できるため、税金や社会保険料の軽減ができます。
ほかに退職金制度を設けているかどうかで掛け金の上限額が下記のように変わります。
企業の制度 | 拠出限度額 |
DCのみ | 月額55,000円 |
DC+退職一時金 | 月額55,000円 |
DC+中小企業退職金共済 | 月額55,000円 |
DC+確定給付企業年金 | 月額27,500円 |
DC+厚生年金基金 | 月額27,500円 |
選択制DCの場合
一方従業員がDCに加入するのかどうか選ぶことができる選択制DCもあります。
選択制DCは掛け金を手当として支給。
従業員はDCに加入するかどうか検討し、加入する従業員はその手当を掛け金に充当します。
加入しない従業員はそのまま手当として給与を受け取ります。
手当を掛け金に充当したらその分給料が減ることになるため、税金や社会保険料の負担も軽減できます。
また掛け金に関しては途中で金額変更が可能。
そのためライフプランに応じて、掛け金を増やしたり、減らしたりできます。
また掛け金に関してはマッチング拠出という制度があります。
マッチング拠出は企業が負担している掛け金に対して、従業員が上乗せして掛け金を拠出できる制度です。
ただしルールとして、
企業がかけている金額以上の掛け金を従業員がかけられない。
前述の掛け金限度額を超えての拠出はできない。
マッチング拠出ができるかどうかは企業の人事総務に確認をしてみましょう。
② 運用益が非課税になる。
自分で資産運用をしていたら、NISAやつみたてNISAで運用をしていない限り、資産運用で儲かった部分には20.315%の税金がかかります。
ただしDCで運用をしている場合、運用益が出たとしても税金がかかりません。
③ 受け取る際に控除を受けられる。
受け取り方は3種類
・一時金として受け取る
一時金で受け取ると退職所得控除が使えます。
退職所得控除の計算式は下記の通りです。
勤続年数 | 退職所得控除 |
20年以下 | 40万円×勤続年数 |
20年超 | 800万円+70万円×(勤続年数-20年) |
※勤続年数の端数は切り上げ
仮に勤続年数が30年3か月のかたで今までに退職金の受け取りがなかったら、
800万円×70万円×(31年-20年)=1,570万円までは非課税で受け取れます。
・年金形式で受け取る。(一般的に受取期間は「5、10、15、20年」の5年刻みで選択)
年金形式で受け取ると公的年金等控除が使えます。
そのため、老齢基礎年金や老齢厚生年金の受け取りがある場合は、DCの受け取り金額と合算して税金の計算がされます。
No.1600 公的年金等の課税関係|国税庁 (nta.go.jp)
・年金と一時金の組み合わせ
例えば退職控除額分だけ一時金で受け取り、オーバーする部分は年金形式で受け取るといったことも可能です。
DCのデメリット
従業員側
・60歳まで引き出せない
退職金制度のため、例えば子供の教育費や住宅購入の頭金に使いたいとなってもDCからお金を引き出して使うことはできません。
・資産運用リスク
どの金融商品を選ぶかによって将来受け取れる金額が変動します。
また必ずしも資産運用がうまくいくとは限らないため、思ったより増えないといったことも考えられます。
・社会保険料軽減が必ずしもメリットとは限らない。
社会保険料の支払いが軽減すると、将来受け取る厚生年金が減ったり、傷病手当金、出産手当金、労災給付や失業給付、育児介護休業給付が減ったりする場合があります。
そのため一概には社会保険料軽減できるDCの活用がメリットになるとは言えません。
社会保険料や税金の負担減少と将来の受け取るであろう年金の減少を天秤にかける必要があります。
しかしこのシミュレーションはDCによる運用益がどのくらい見込めるのか、将来受け取る年金がいくらになるのかが分からないため、難しい問題でもあります。
将来のライフプランを考えたうえで加入するかどうか検討しましょう。
企業側
・掛け金の捻出
選択型DCは給与の中で従業員が掛け金を決めるため、原資は必要ありません。
一方で企業が掛け金を負担する場合は掛け金分を捻出する必要があります。
・運用コスト
運営委託している金融機関に対して導入に必要な初期費用や運営管理手数料などを支払う必要があります。
・投資教育の必要性
従業員はDCに加入することで運用リスクが生じます。
運用リスクを理解していただくために継続的な投資教育が必要になります。
自社で継続的な投資教育が難しい場合は、外部講師を招くなどして、運用リスクや運用方法について従業員に理解していただきましょう。
2022年の制度改定
受け取り可能期間が75歳までに引き上げ
加入可能年齢の引き上げ
厚生年金被保険者であれば70歳未満までになります。
10月以降
DCの加入者がiDeCoに加入するには規約で定めて労使間での同意が必要です。
10月の改定により、希望者はiDeCoに加入できます。
※マッチング拠出しているとiDeCoの加入はできません。
ただし掛け金の上限は下記のとおりですので注意が必要です。
DCのみに加入 | DCと確定給付型に加入 | |
DCの事業主掛け金 | 55,000円 | 27,500円 |
iDeCoの掛け金額 | 55,000-事業主掛け金 | 27,500円 |
まとめ
今回は企業型確定拠出年金(=DC)についてまとめました。
DCに関しては勤めている会社に制度があるのかどうかを確認する必要があります。
もしDCがあり老後に向けて資産形成をしていきたいかたは加入検討しましょう。
またiDeCoにはない社会保険料の軽減効果が魅力的です。
ただし社会保険料の軽減効果はメリットとデメリットがあるため、シミュレーションすることが大切です。
DCに限った話ではありませんが、メリットデメリットを理解したうえで制度を活用するようにしましょう。
もし自身でシミュレーションが難しいかたはFPに相談してください。