なぜ控除率の見直しがあるのか、まずはその背景を知っておきましょう。
ひと昔前の住宅ローン金利は、3%や4%台が当たり前であり、住宅購入者の利息負担は高額でした。
住宅ローン控除の発端は、住宅を購入する人の金利負担を軽減する目的で開始されました。
低金利の現在は、控除率よりも借入金利のほうが低いため、1年間で支払った利息総額が住宅ローン控除による節税額を下回る逆ざやになってしまっていることもあります。
例えば住宅ローン変動金利0.4%で5,000万円の借り入れをした場合は下記のようになります。
支払っている利息よりも控除される金額が大きくなっていることが読み取れます。
この状態が逆利ザヤとなります。
※控除期間中の変動金利上昇および契約者の所得は加味していません。
そこを是正するために、住宅ローン控除率を改正すべきということになっています。
現行の住宅ローンは?
まず現行の住宅ローン控除を見ていきます。
・住宅ローン控除額
【1~10年目】
住宅ローン年末残高の1%分が控除される。
一般の住宅は40万円、長期優良住宅・低炭素住宅は50万円となります。
【11~13年目】
次のいずれか少ない額が控除限度額です。
①年末残高等〔上限5,000万円〕×1%
②(住宅取得等対価の額-消費税額)〔上限5,000万円〕×2%÷3
※契約者の所得によって控除額が異なります。
・控除期間
注文住宅で令和3年9月末までに契約・分譲住宅で令和3年11月末までに契約
かつ、令和4年までに入居した場合はコロナ特例により控除期間13年間に延長されています。
今回はどのような見直しが検討されてるの?
見直し案としては2つあります。
一つは国交省案、もう一つは財務省案です。
二つにどのような違いがあるのかを見ていきます。
①国交省案
比較的メディアで取り上げられているのは国交省案になります。
国交省案は控除率を1%から0.7%に引き下げる案です。
こちらは控除率が引き下がるだけなので比較的わかりやすいです。
仮に住宅ローン変動金利0.4%で5,000万円の借り入れ、控除期間が13年の場合だと下記の通りです。
現行の場合は認定長期優良・低炭素建築で限度額50万円控除だった場合は、5,266,757円。
限度額40万円控除だった場合は、4,943,175円。
国交省案で0.7%控除になった場合は、3,686,732円。
比較すると0.3%引き下がった場合の影響が大きいことが分かると思います。
②財務省案
財務省案の場合は、支払っている住宅ローンの支払い利息分を控除します。
仮に住宅ローン変動金利0.4%で5,000万円の借り入れ、控除期間が13年の場合だと下記の通りです。
財務省案の方が逆利ザヤを解消するといった点では理にかなっています。
そうなると住宅ローン金利の選び方も大きく変わる可能性があります。
例えば……
①あえて変動金利ではなく、固定金利を選択する。
②変動金利で組み、金利を上乗せして団信の特約を付けて保障を充実させる。などなど
なお国交省案も財務省案も控除限度額や控除期間はいずれも未定です。
またいつからの住宅購入から見直しがされるかも年内中を目途に固まるかと思います。
まとめ
これから住宅購入を検討されている方は今後の動向を確認しましょう。
今までの改定されてきた経緯からすると過去の分まで遡って新しい住宅ローン控除制度を適用することはなかったため、 すでに住宅購入をして住宅ローン控除を受けている方に関しては、借り入れをした際の制度が適用になると思います。
住宅ローン控除が改定されるからその前にマイホーム計画を前倒ししよう!という考えは危険です。
ほとんどの方は人生1度の大きな買い物になります。
そのためじっくりと検討をしたうえで住宅購入をした方が後々後悔することもないかと思います。
まずはご自身のライフプラン全体を考えたうえで住宅購入するのかどうかを考えましょう。