前回は年金の繰上げ請求と繰下げ請求の概要と損益分岐点についてお伝えさせていただきました。
前回お伝えした通り、最終的にはいつ亡くなったのか、いつまで生きるのかの結果論でしか正解は分からないと私は考えていますが判断基準をお伝えすることはできます。
今回のコラムでは繰上げと繰下げの判断をするにはどういったことを考えて判断すればいいのかの判断基準についてお伝えします。
前回のコラムをまだ読んでいないかたはぜひ読んでからこちらのコラムをお読みください。
どうやって判断をする?
平均余命で考えてみる
例えば厚生労働省が発表した令和4年簡易生命表だと65歳男性の平均余命は19.44年、65歳女性の平均余命は24.3年とされています。
そうすると、男性は平均84歳、女性は平均89歳まで生きられます。
男性の場合は年金繰下げによる損益分岐点の前後になりますが、女性であれば長生きする傾向にあるため、ご夫婦であれば奥様の年金を繰下げするのも一つの方法でしょう。
自分の健康状態
前述では平均余命で見ていきましたが、あくまでも平均になります。
自身の健康状態次第では平均よりも生きられない可能性は十分にあります。
例えば直近の健康診断で特に健康状態に問題がないのであれば、繰下げてもいいかもしれません。一方で直近の健康診断でなにか健康上問題があったり、すでに大病を患っていたりする場合には繰上げを検討してもいいかもしれません。
収入と資産の状況
公的年金の受け取りがなくても、ほかの収入を得られるのであれば繰り下げてもいいでしょう。
ほかの収入とは、再雇用による給料やiDeCoやDC、退職金の切り崩し、加入をしていた個人年金保険の受け取りといったものが考えられます。
資産を多く持っていてしばらくはその資産を取り崩して生活ができるようなかたも繰り下げるのも一つの方法です。
ただし、取り崩しをする場合には毎年何百万単位の取り崩しになるため、メンタル的にストレスにならないかたでないと難しいでしょう。
収入と資産の状況を確認するにはキャッシュフロー表の作成とB/Sの作成が有効です。
現状を数字という目に見える形にすることで年金を受け取った場合の年間収支と受け取らずに資産を取り崩し、繰り下げた場合の年間収支や資産取り崩し状況を比較検討することでどちらが有利なのかを確認できます。
現状の割合はどのくらい?
それでは実際に年金を繰り上げている人、繰り下げている人はどのくらいいるのかを見てみましょう。
公益財団法人生命保険文化センターより参照となります。
厚生労働省の厚生年金保険・国民年金事業年報(令和2年度)の調べによると国民年金を繰上げ受給しているかたが26.1%、繰上げ受給しているかたが1.8%となっています。
繰下げするかたよりも繰上げするかたのほうが多いのが現状です。
判断基準をもとに自分はどうすればいいのかを考えてみましょう
何度も言いますが、結局のところいつ死ぬのか、いつまで生きるのかの結果は分からないと繰上げと繰下げどちらのほうが良かったのかは分かりません。
ただ今回お伝えをしたような判断基準を持っておくと自分の場合ならどちらが有利になる可能性が高くなるかの事前分析が多少可能になります。
特にキャッシュフロー表の作成やB/Sの作成は数字でシミュレーションをすることで問題を分かりやすくする一助になるでしょう。もし迷っているかたがいらっしゃいましたら、ぜひ一度FP相談をご活用ください。